くも膜下出血〜 subarachnoid hemorrhage:SAH 〜
くも膜下出血画像例
【くも膜下出血 単純CT】 | 【正常 単純CT】 |
くも膜下腔に出血した状態のことを指す。
【上記画像が示すようにくも膜下腔が出血によりHDA(high density area:高吸収域)となっている。】
出血が脳動脈瘤の存在する脳槽を中心に広がり、さらに脳溝や脳室内にも及んでみられる。
主に脳動脈瘤破裂にて出血。約8割
ほかに、脳動静脈奇形や頭部外傷時にもみられる。
典型的な症状は急激な激しい頭痛や悪心・嘔吐、髄膜刺激症状(頸部硬直など)、出血度合いにより様々な症状を引き起こす。
ウィリス動脈輪を中心とした脳動脈系の解剖
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主として、脳底部の主幹動脈系(ウィリス動脈輪)の血管分岐部に発生。 好発部位は前交通動脈・内頸動脈が大部分を占める。次いで中大脳動脈に多い。
解剖図は上記参照のこと
診断&検査
くも膜下出血が疑われた場合、まずCT検査を行うことが一般的。
(発症24時間90%、4日以内で80%以上の症例が診断可能。しかし、それ以降は血腫の吸収値が低下するため診断は困難となる。)
CTでくも膜下出血を認めたら、迅速な動脈瘤の治療が要求される。
(発症後24時間は再破裂の危険性大。再破裂により予後不良となるケースになってしまう。)
引き続いて行う検査は、脳動脈の検索。
一昔前はDSAによる頭部アンギオグラフィー(CAG,VAG)が一般的であったが、近年CT装置の発達により造影剤の急速静注によるCTアンギオグラフィー(CTA)のみで動脈瘤検索は可能になってきた…?
脳動脈瘤の存在が確認できたら、その部位の大きさ、詳しく把握し、さらに脳血管れん縮についても情報を得る。
*【脳動脈れん縮】:くも膜下出血をおこすと、動脈瘤周辺などの動脈は一過性に強い狭窄をきたす。この現象を脳血管れん縮という。
CTアンギオグラフィー(CTA)3D画像 正常画像 |
出血量の少ない場合、急性期でもCTでもHDAを示さないことある。
また、原因不明の水頭症もSAHの可能性がある。こういう症例の時スクリーニング目的でMRIが施行されることも多い。
MRIではFLAIRとT2強調像がSAHの診断には有用とされる。
(血腫はFLAIRで高信号、T2強調像では低信号に抽出される。)
MRIのSAHの診断能は高いものの、撮像時間が長い、患者のモニターや急変時の処置がしにくいなどの理由から検査の第1選択肢としては推奨されていない。
但し、造影剤なしでMRアンギオグラフィーを行えるため、動脈瘤の検索を健診で頻繁に行っている。
治療
動脈瘤破裂の治療の目的は再破裂の予防にある。また、ある程度大きな脳内血腫を伴っている場合は、血腫除去は救命的意味を持っている。
治療方法は開頭手術で、動脈瘤頸部のクリッピングが主流。ただし、形状や位置関係でクリッピング手術が行えない場合、トラッピング、ラッピング術という方法もとられることもある。
また、血管内手術(透視下ガイドワイヤーにて)によって塞栓物質を動脈瘤内に留置し、血栓化を促す方法も取られることもある。
術後
術後出血・脳浮腫・脳血管れん縮などの合併症によって、生命に危険が及ぶおそれがあること。見当識障害があるため、安静が保たれない。これらを念頭におき看護活動を行わなければならない。
予後
最初の出血で1/3が死亡する。さらに血管攣縮や再出血の影響が加わり、4週間以内では約半数が、10年以内では60 - 80%が死亡すると言われている。また救命できても後遺症が残る例が多く、完全に治癒する確率はクモ膜下出血を起こした人の中で2割と低い。(ウィキペディア参照)